白内障手術のおはなし

  瞳のすぐ後ろに水晶体というレンズがあります。(下図藤色)
年をとると、この水晶体がにごって目の中に光が入るを妨げ、やがてはメガネを作り替えてもかすんで見にくくなって来ます。
白内障の絵
これが白内障です。

白内障スリット写真

老人性白内障前眼部写真
水晶体が褐色に濁っています。



このようになると、濁った水晶体を取り除かないと視力を取り戻すことができません。これが白内障の手術です。
にごった水晶体を取り出し、代わりに人工の水晶体(眼内レンズ)を挿入します。
(メガネや健康食品等で白内障は治りません。)

 

 眼科手術の進歩により、安全に短時間で手術ができるようになりました。
したがって、見えなくなるまで待つのではなくて、テレビの字幕が見えづらい、日が暮れると運転を控えるなど
生活の質が低下するようなら
手術を受けられた方がよいと思われます。


特に車を運転される方の片側の視力が低下すると、遠近感、スピード感がとりにくくなり
視野も狭くなるため早めの手術をお勧めします。

当院では超音波白内障手術を行い手術時に眼内レンズを移植しています。
ほとんどの白内障手術は日帰りで行っています 

白内障手術風景

手術室での白内障手術風景
手術用顕微鏡下で手術をします。

感染予防のため、手術着、手術野の覆いはすべて
ディスポーザブル(1回使い捨て)を用いています。

眼内レンズ挿入眼の絵
水晶体の殻を残し、中の混濁を取り除き
そこに眼内レンズを挿入します。


眼内レンズの写真 挿入器より眼内レンズを押し出す
これが眼内レンズです。(KS-Ni スタージャパン社製直径6mm) これがインジェクター(挿入器)です。
眼内レンズが中にセットされています。
創口よりインジェクターの先を眼内に入れて、中でこのように開きます。眼内レンズが外眼部(結膜、睫毛等)に触れないため、細菌感染の確率が下がり、より安全に手術が行えます。

手術は局所麻酔下15〜25分で終了、切開創は2.4〜2.8mmです。 
術後約2時間の安静後、帰宅します。

眼帯は手術した目にだけしますので、帰宅した後も食事、トイレなどの日常生活は普段どおり行えます。
テレビを見るのも差し支えありません。

翌日には眼帯をはずします。

単焦点眼内レンズを用いた白内障手術は健康保険の適応が受けられます。
多焦点眼内レンズを用いた手術は選定療養となります。


 「単焦点レンズ」の手術費用は、手術料、眼内レンズ代、眼内レンズを入れるときに用いるお薬代、抗生物質の点滴代など合わせて約15万円になります。
すべてが健康保険の対象になり、それぞれの負担割合分が自己負担になります。たとえば3割負担の人は4万5000円、老人で1割負担の人は1万5000円になります。(日帰りの場合)
通院で手術をしても、入院で手術をしても手術成績に変わりはありません。遠方で通院困難な方以外は、外来手術をお勧めします。

生命保険、簡易保険で疾病特約に入られている方は、疾病給付金が20倍保証となり、給付の対象となります。
(保険会社に御確認ください)


「多焦点レンズ」を希望される場合は選定療養※となり、手術料は健康保険の対象となる単焦点レンズの手術料に多焦点レンズの費用が追加されます。レンズにより追加料金が異なります。

レンズの種類 レンズ名 メーカー 価格(税込み)
拡張焦点深度レンズ シンフォニー AMOジャパン 11,5500円
拡張焦点深度レンズ シンフォニー トーリック AMOジャパン 14,3000円
3焦点レンズ PanOptix 日本アルコン 214,500円
3焦点レンズ PanOptix トーリック 日本アルコン 247,500円
連続焦点レンズ シナジー AMOジャパン 214,500円
連続焦点レンズ シナジー トーリック AMOジャパン 247,500円

選定療養とは社会保険に加入している患者さんが、追加料金を負担することで保険適応外の治療を、保険適応の治療と併せて受けることができる医療サービスです。


 比較的安全に手術ができる白内障ですが、以下の問題点があります。

麻酔アレルギー ・・・ 歯の治療で麻酔を用い、気分の悪くなった人は要注意
             です。


術中の出血 ・・・・・・ 狭心症、脳梗塞の治療で、血のさらさらになるお薬を用
             いられている方は、医師と相談の必要があります。

術後感染症 ・・・・・ 手術後にバイ菌が入り炎症を起こす事があります。
             手術部位を清潔にし、手術中、手術後に抗生物質を投与
             し予防します。


後発白内障 ・・・・・ 手術後に、残した水晶体の殻が濁る病気です。
             レーザー光線での治療が確立しています。
  

 100%安全な手術はまずありません。手術のリスクは患者さんの年齢、全身疾患の有無(高血圧、心臓病、糖尿病など)、白内障の進行ぐあい、白内障以外の目の病気の有無(緑内障、ぶどう膜炎など)で異なります。
主治医と十分に話をし、説明を聞くことが大事だと思います。